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仙台高等裁判所秋田支部 昭和24年(を)156号 判決 1950年3月29日

被告人

佐藤富士雄

外二名

主文

原判決中被告人若松繁同住谷昭男及び同佐藤富士雄に関する部分を破棄する。

被告人若松繁を懲役五年に、被告人住谷昭男を懲役四年に、被告人佐藤富士雄を懲役二年六月に処する。

但し被告人佐藤富士雄に対する原審における未決勾留日数中六十日を同被告人に対する右本刑に算入する。

原審において押收した証第八号革靴一足及び同第九号冬物國民服上衣一着は被害者渡辺寅三にこれを還付する。

訴訟費用中原審証人関川エンに支給分は全部被告人若松繁の負担、原審証人柴田俊雄、同靑木日出夫、同北村宇一郞、同三浦善之助、同兒玉已、同若松勇一及び同佐々木修助に支給分は全部被告人住谷昭男の負担、原審國選弁護人藤盛亮三及び当審國選弁護人米沢多助に支給分は全部被告人佐藤富士雄の負担とする。

理由

弁護人米沢多助の追加控訴趣意書記載の控訴理由について。

(イ)被告人佐藤は昭和六年十二月二十七日生であり同被告人に対する本件公訴当時はもとより原判決当時において同被告人が少年法第六十八條第一項にいわゆる少年であること及び同被告人が被告人若松、同住谷、原審相被告人米沢末治及び同粕谷兼治と同時に公訴提起され同人等との共同被告事件として共同審理を受け判決されたことは本件記録によつて明らかであるが所論の少年法第四十九條第二項及び第五十條の規定は裁判官に対する被告事件処理上の訓示規定であり具体的事件の処理に当つて少年に対する被告事件を他の被告事件と分離するかどうか、又少年事件の審理に当つてその調査の範囲方法をどのようにするかは裁判官の良識とその妥当な裁量に一任されているものと解するのが相当であるから原審において前記のように被告人佐藤に対する事件を他の被告事件と分離しないで審理をし又同被告事件の審理に当り少年法第九條所定のように專問家に命じて調査させなかつたことの一事によつて原審の同被告人に対する審理手続を違法であるということはできない。

(ロ)しかして原判決判示の第一の事実は前示認定のように被告人若松、同住谷、同佐藤及び原審相被告人米沢屋の四名が渡辺方に押入り金品を強取することを共謀の上同人方に行き、まず同家物置小屋から前記白晒木綿等を窃取し更らに同家の玄関茶の間等から前記現金及背廣洋服等を窃取したのであり右物置小屋と同家玄関茶の間等は場所を異にするが右物置小屋は右玄関の直ぐ前に建つておるものでありひとしく渡辺の所有管理するものであること本件記録によつて明らかであるから右両所の窃取行爲は結局包括一罪を構成するものといわなければならない。しかるにこの点に関する本件起訴状をみるに、被告人若松、住谷、米沢屋、佐藤の四名は前記渡辺方に押し入り金品を強取せんことを謀議し昭和二十四年三月十二日午後十一時頃

第一の(一)渡辺方物置小屋において家人の寢靜まるのを待機中同所にあつた渡辺所有の原判決判示第一の(一)判示の白晒木綿十尺位等を窃取し

(二)右物置小屋において前記四名は同判示第一の(二)判示のように覆面し匕首、藁繩をそれぞれ所持して同家風呂場の硝子窓から屋内に忍び入り被告人佐藤及び米沢屋は同判示のように同家台所の庖丁差にあつた出刄庖丁及び刺身庖丁を携えて同家玄関茶の間箪笥部屋等より渡辺所有の同判示の現金二千六円等を窃取し

と記載しおり檢察官も右(一)(二)の窃取行爲を併合罪関係に立つ二罪とし原審もそのまま併合罪関係に立つ二罪と認定していることの点に関する原判決の事実判示及び法令の適用における記載により明らかであるから原審はこの点において法令の適用を誤つた違法があるものといわなければならない。しかしこの点の違法はそれ自体判決に影響がない。

(ハ)証第七号の手拭は右強盜共犯者の被告人佐藤が右犯行に際し覆面したものであり同被告人の所有に属すること本件記録により明らかであるが本件記録によつても同被告人が右手拭を右強盜の手段である脅迫行爲に供し又は供しようとしたことを認めることができない右手拭は通例夜盜がなすように同被告人が單に渡辺方の家人に犯行者が何人であるかどんな風貌の者であるかを知らせないように顏を覆うために使用したにすぎないものというべくこれ又強盜行爲の供用物件として沒收し得ないものといわなければならない。論旨理由あり。

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